旅のこと
20代の初め、バックパックを背負って行った、
初めての外国がインドでした。
その時目に焼き付いた光景は、私の中に鮮烈な印象を残しました。
砂漠の町の絞リ布、草原に干された深紅のサリー、
オールドバザールの軒先に吊るされた無数の布…
そのインパクトは、民族の布への興味に繋がり、
今の仕事を始めるきっかけにもなりました。
以来、ずっと旅をしています。
染織を仕事としてからは、
布が生まれる現場に足を運ぶようになりました。
まだ手仕事が残っている土地を訪れて、
手紡ぎ糸や手織りの生地、紡ぎの素材を仕入れてきます。
また、布以外の工芸品や、新しいクリエーターの作品をセレクトしてくることもあります。
一度は手に入った素材が、数年後には忽然と消えてしまったり、
値段が高騰して買えなくなってしまうこともしばしばですが、
自分の中の”日本”と、旅した国のエッセンスがクロスオーバーして、
新しいイメージに変容し、作品となっていく過程がとても好きです。
これからも、”旅”と”布”という自分の人生の2大テーマを、
楽しんで続けていきたいと思っています。