制作のこと
*素材-material

当工房の製品は100%綿、麻、絹、毛などの天然繊維を使用しています。
タイのヘンプやコットン、ラオスのシルク、インドのタッサーシルクやパシュミナ、リトアニアのリネンなど、
旅で出会った素材もよく使います。
また、畑で育てた和綿や、養蚕による自家製真綿、山から採ってくる野苧麻の繊維などの、
自給した様々な素材もミックスして、オリジナルの素材を作っています。
*養蚕-silkworm

2009年から 養蚕を始めました。まずは畑に桑の苗木を植えるところから始め、今は年に一回、春蚕を1千頭だけ育てています。
1千個の繭では、少ない量の糸しか取れないため、主に真綿にして、ウールや麻と混ぜて紡いで糸にします。
お世話は大変ですが、無心に桑を食べるお蚕さんを見ていると癒されます。
毎年5月末から始める養蚕の時期には見学も可能ですので、どうぞ見に来て下さい。
*紡ぎ-spinning

紡ぎには、無限に色と素材を組み合わせて、オリジナルの糸を作り出せる自由があります。
旅で出会った素材と自家製の素材をミックスしたり、パレットのように色と色を混ぜ合わせて新しい色を作り出すのは、
新しい土地に降り立った時のような新鮮な喜びがあります。
また、何も考えず、ただ無心に手を動かす時間は、まるで瞑想のように、心のバランスが整えられる気がします。
*藍染-indigo dye

徳島のすくも藍、堅木の灰からとった灰汁、貝灰、小麦ふすまという、ナチュラルな材料だけを使い、醗酵させて藍の染液を作ります。
藍は生きている染料なので、温度や栄養、PHなどの状態によってコンディションが変化していきます。
小さな子供を育てるように、常時気をかけ、様子を見ながら染めていきます。
ブルーが大好きなこともあり、私の仕事のベースカラーになっています。
畑では毎年、藍草を栽培して、自家製のすくも作りにも取り組み始めました。
*草木染-natural dye

織りの経糸、紡ぎの素材はすべて、天然染料で染めています。
自然が生み出す色の多彩さ、鮮やかさにはいつも驚かされます。
しかし、伝統的に使われてきた染料植物の多くが、薬用植物でもあることは、
染色が単なる発色のためではなく、それを纏った人の健康を助け、願うためでもあったことを物語っています。
天然染料にこだわるという当工房の方針もそのためです。
実際、染め作業をしていると、そのアロマで私自身も元気になるような気がします。
*織-weaving

古代から、経と緯が交互に入れ替わり一枚の布を形作っていく織作業は、陰と陽、時間と空間、女性性と男性性といった
相反する二つの世界を一つにまとめ上げる儀式としての意味もありました。
また、民族の布に見られる文様の多くは、大切な家族を厄災から守るためでもありました。
ファストファッション全盛の時代に、あえて個人で布を一から作っているのは、
そうした、かつてはあった原初的なチカラを、少しでも布に取り戻したいからでもあります。
*衣装-costume

染めや織りの布は、オリジナルの民族衣装を想定して、デザインを考え、服や小物に仕立てています。
毎年定番で出している”藍染カシュクールワンピース”は、養蚕神話を元にした架空の民族の装束のつもりです。
旅が好きなので、私の民族もノマド(遊牧民)という設定です。
旅のグッズなどもどんどん増やしていきたいと思っています。